2020-10-12

霊感ってなんなのか?って話

中華街時代からの相棒、Magical Forest Tarotと易サイコロ

10年ほど前、横浜中華街で占い師という仕事をしていたことがある。
占い師はお客さんの手相を見たり、タロットカードをめくったり、生年月日を聞いて暦をめくったりするのだけれど、私には霊感とかスピリチュアルな力はほとんどなかったと断言できる。

じゃあどうやって占ってるのかというと、カードや手相や暦から「象意」を読み取って、それを辿りながらストーリーを描いていくのだ。

「象意」とは、どうやら占いの専門用語らしいので説明しておくと、カード、数、色、方角や時間、星座や干支などにそれぞれ意味があるという考え方だ。

陰陽五行という言葉を聞いたことがある人もいるだろう。音、色、季節、方角、味、臓器、感情などのカテゴリーに、木火土金水の5つのエレメントが当てはめられている。また、四角や偶数は陰、丸や奇数は陽といった感じで、陰陽をあらわす象もある。
そのほかにも、易の八卦(8×8で64卦)、74枚のタロットカード、十二支、十干、12星座や惑星、手相や人相の線や点や膨らみといった「象」、すなわち目に見える”かたち”に、それぞれ意味を紐付けしてあるのだ。

漢字に意味があるように、ある綴りの英単語に意味があるように、占いでは様々なものの形や様子、あらわれ方に意味があり、それを読み取る訓練をした人が占い師なのである。

その訓練をしていると、この世のいろいろなものを見ることで、意味が感じられてしまうのだ。
例えば、なにか疑問を感じた時にふと窓を見ると、電線にスズメが3羽、樹木に花が5輪咲いていたとする。易を学んだ人はとっさに3=離=火、5=巽=風、「火風鼎」という卦が浮かび、その疑問への回答を得たりするのだ。

霊感というより、連想みたいなものかもしれない。でも、確かに普通には見えないストーリーが見えてしまう、ということにはなる。

たとえば「鳥」などといった漢字を見た時、我々はそれなりの鳥を思い浮かべるが、漢字を知らない人はその連想はしない。それを同じで、特殊な意味づけの訓練をすることで見えてくる、ちょっと別の世界があるということである。

日本でも、古代から平安時代あたりまでに中国から渡ってきたさまざまな文化の中に、その「象意」も組み込まれていたため、墳墓や神社にはその名残がある。
有名なのは「前方後円墳」とか。陰をあらわす方形と、陽を表す円形が組み合わさり、完全な世界を描いている。
神社では、一例ではあるが、祀っているのが男神なのか女神なのかで、屋根の「千木」と呼ばれる部分の削ぎ方が違う。男神なら地面に垂直(陽)に、女神なら地面に平行(陰)にカットされているのだ。

ちょっとした縁起担ぎでは、土用の丑日にうなぎを食べる習慣とか。土用は季節の変わり目に年4回あるのだが、夏→秋の土用は夏(=火)の勢いでカラカラに乾いた土なので、丑の日(=水気のある土)に「う」(=水)のつくヌルヌルした(=水)食べ物を食べて体内のバランスを取ろう、といった話なのである。なんなら、うどんでもうりでもいいのだ。

というわけで、凄腕の占い師さんは、向き合って座った途端、目の端に入ったなにかから象意を得て、何を相談に来たのかが見えちゃうこともある。訓練を重ね、経験を積んで、象意の幅が広くなって(単語も、複数の意味があったりするでしょ)、ストーリーがブワッとつながるのだと思う。
こんな私ですら、中華街の店に座っていた時にはそういう経験が何度もあった。でも、少なくとも私のは、霊感ではなかった。脳内でとても素早く繋がった、象意の見せたストーリーだった。

占いではなくても、象意はとても面白い。洋の東西を問わず、宗教画などには象意がたくさん散りばめられている。
それは文字を読めない信徒たちへの教育のためであったり(聖書や聖人のシンボルをちりばめた絵画など)、密教的な儀式のイメージを高めるためであったり(曼荼羅のデザインにも陰陽=女男の違いがある)。
そして歌と声の先生としては、発音そのものに意味が宿るとしているサンスクリット語のマントラに、とても興味がある。

今はもう、占いの仕事はしていないのだけど、私の中には「象意」が多少は埋め込まれていて、ふわっと断片的ななにかが浮かんだりする。それも世界のひとつの面だ。
外国語を学ぶことと同じく、占いを学んだことは、私の世界そのものを広く豊かなものにしてくれたのである。

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