生業について

歌と声の先生をしております

現在の私の生業は、歌とか声の出し方を教える講師業です。
ボイストレーナーというのが一番わかりやすい名称かもしれませんが、じゃあボイストレーニングっていったいどんなことするの?って思いますよね。

テレビのカラオケ番組とか、オーディション番組、最近ではYouTubeなどでその名を聞くことはあっても、じゃあ何をしているのか謎の職業…ボイストレーナー。実のところ、私もちょっと謎だなと思ってます。

アート以前に、マッスルなのです

少なくとも私自身は、音楽の先生ではなくて、声の先生であるという自覚を持ってやっております。発声するという運動について、フィジカルに鍛えていく感じで、まさに「トレーニング」の名にふさわしいクラスです。

ただし難しいことに、発声ってほとんど見えない部分、さわれない部分で行う運動です。頭で理解すること、体感して理解すること、小脳運動野を書き換える繰り返しの鍛錬(いわゆる素振りみたいな感じですね)が必要です。

足を組んだり、片側の手にばかりバッグを持っていると体が歪んでくるように、発声もちょっとした変なクセを続けると、そのフォームが染み付いていくのです。なんと、生まれた時から子ども時代に聞いていたお母さんの発声の影響が、大人になっても残っていたりするのです(お母さんたち、責任重大ですよ!)

声のトレーニングって必要なの?

筋トレがこんなにも流行っている世の中で、ではなぜボイストレーニングがそんなに普通のことじゃないのかと言いますと、まあとりたてて鍛えなくても、とりあえずの用は足りるからではないでしょうか。

発声の機会は日常会話がほとんどで、ちょっとしたプレゼンとか面接とか、たまのカラオケとか結婚式の余興とか、そのくらいのことなら、訓練しなくても及第点のパフォーマンスができる人は結構いると思います。

でも、長く喋ると喉が痛くなってしまったり、声が枯れてしまったり、話している最中に息苦しくなってしまう人も、結構います。男性は40代くらいから、女性は50代後半くらいから「なんか声が出にくいかも」「前よりしゃべりにくくなったかも」と自覚する方が出始めます。

久しぶりに歌ってみて、声のトラブルや衰えに気付く方も多いです。歌の方が、日常会話よりもシビアな運動だからです。音の高低差、フレーズの(つまり使う息の)長さなど、日本語の日常会話よりもずっと大変です。

日常的に使わない部分は、少しずつ退化というか、生き物として当然の「エネルギー節約による切り捨て」によって、筋力やストレッチ性が失われていくのです。だから気づいたら昔みたいに歌えなくなってしまっているのです。

日常会話だけじゃ、やっぱり足りない

そんなわけで、日頃からしっかりした息遣いや声のための筋肉をバリバリ使ってあげられたらいいのになと思うのですが、いかんせん、日本語ってそんなふうにできていない言語なのです。日常会話は特に、節約省エネモードですから、あえて声を出す機会を作ることをお勧めしたいのです。

少し前までの日本には、お経を読むとか朗読をするとか、そういう習慣がありました。また、君が代を歌えばわかりますが、本気で日本語を歌おうとすると、かなり大変です。

※ 関西弁など、高低差のある方言を使っている人は、日常会話でもそれなりにパワーがいるので、声が衰えにくい気がします。あと、めっちゃしゃべるし、大阪の人。

歌は目的でもあり、手段でもある

そんなわけで、声周りの筋肉を鍛えていくには、日常会話よりもシビアな発声が要求される歌の方がいいなと思います。英語の歌を歌うのもとてもおすすめ。英語やスペイン語などの外国語は、発音のために、舌や表情筋も激しく使います。
もちろん日本語の朗読でも良いですが、音の高低差が少ない(音域が狭い)ので、声帯の伸縮は少なめになります。

ほっぺたを引き上げる筋肉を使うことで口角は上がるんですよ

歌は苦手という方もいらっしゃいますが、別に「今すぐカラオケ行って歌いなはれ〜」ということではなくて、なにか好きな歌があるなら、それを使ってトレーニングしてみるといいよーとか、そんな感じでクラスを進めています。なにしろ、歌うのは楽しいですから!(歌うのが辛い人がいるのもわかってますよ〜)

もちろん、歌が上手になりたくてくる方は大勢います。カラオケとかバンドとか、披露宴の余興とか、動機は様々です。遠慮がちに「歌はそのうち…」とか「英語の曲もいつかは。1年後とか…」なんておっしゃる方もいますが、そんなこと言わずに好きな曲を今すぐ歌いましょ。

どんな曲でも、練習すべき課題はいっぱいあるし、難しい曲でも今の段階でできることは色々ある。初級なら初級なりに歌ってみて、1年後ぐらいにもう一度、別の課題を見つけながら同じ曲を歌ってもいいのだし。「大変だったあの音が、楽に出るようになってる!」とか、成長に気付くのも嬉しいものです。

いろんな声を出してみるのが楽しい

筋トレやストレッチも、普段使わないような角度に曲げたり、ひねったりしますが、声の場合もそういうトレーニングをしていきます。レッスン中には、びっくりするような変な声を出してみたりするのですが、声周りの筋肉を極端に使っていくことで、ど真ん中の「気持ちのいい声」をとらえやすくなります。

個人的には、トレーニングで出すような野生的な声、動物っぽい変な声、ちょっと不気味な声とかを出すのが大好きです。むしろ、そういう声を出すのが好きだから、この仕事をしているような気がします。
私は音楽の専門教育は受けていませんが、子どもの頃から本当にいろんな音を真似するのが好きで、得意だったのです。大人になった今でも耳にした音は、とにかく口から出してみたくなります(理性で止めないと、すぐ出ちゃう)。

そんな私の、ちょっとワイルドなボイストレーニング、ご興味あったらぜひ受けに来てくださいね〜。